スワニルダのバレエライフ blog

日々バレエに関わる中で思う事を、綴っています。時には辛口な表現もありますが、(特にバレエ関係者の人は少々傷付く覚悟を持って)お読み頂けると嬉しいです。

増え続ける日本のバレエ教室。その理由とデメリット

バレエ教室はビジネスです。

 

バレエ教室を立ち上げるという事は
独立し自らが経営者になるのですから
「起業」するのと同じ事ですよね。

 

もちろん起業するのは個々の自由なんですが

この少子化の世の中で
1つの市内に既にいくつものバレエ教室が
溢れ返っているような状況の中
またここで新たな教室が生まれたら
さてどうなるのでしょうか。

 

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生徒が分散する為
各バレエ教室の生徒数は減り
教室は経営難に陥ります。


生徒獲得に必死になるあまり
まだ基礎もできていない子供に
難しいヴァリエーションを踊らせ
コンクールに出してみたり
人様の子供の写真を
ばっちり顔出し&名前出ししてSNSへ掲載。


とにかく
「注目を集めたい=なんとか集客に繋げたい」
と思う先生がどんどん出てくるわけです。

 


「私はこんなに生徒を愛しているのよ!」
「小さい子でもトゥシューズ履かせますよ!」
といった派手さを武器に、
SNSで差をつけたいのでしょう。

 


果たして肝心の基礎レッスンのクオリティは
この状況でキープできるのでしょうか?
 

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あなたがバレエ教室を開きたい・開いた理由は何ですか?

 

ぶっちゃけ

バレエ以外やったことないから
今さら一般就職なんて無理(嫌)

と思っている人は実際多いと思います。

 

 

新たに自身の教室を開く理由として
「子供が好きだから」「教えが好きだから」
などと綺麗事を並べる事は誰にでも出来ます。


しかし実際は
一般就職なんてできないからではないですか?

 


自分でバレエ教室を開いて
自分がトップになって
誰にも指図されない状況を作る方が
気が楽だからではないでしょうか?

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今から勉強して資格を取るのも面倒だし学歴も無い。
他にとりえややりたいことがあるわけでも無い。
それに夢だった主役は、自分の発表会でなら踊れる。
なんて良い考えだ・・・


誰でもかれでもバレエ教室を開くの
本当にどうかと思います。


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他に才能も選択肢もあって
どんな職に就こうか選べたんだけど
やっぱりバレエが大好きだから
子供達にバレエを継承していきたいから
という強い思いがあり


まずは最低限の経営の勉強をして
子供を預かる上での責任やマナーについて学び
脚に優しいスタジオの設計や
セキュリティ対策もしっかり整えて
栄養学や解剖学を学ぶため
親に頼らず自分の力で貯めたお金で投資して・・・


強い責任感、覚悟のある決断から
十分な時間をかけて準備をしたのであれば
きっと素晴らしいバレエ教室になると思いますし
応援したいところですが。

 


もしくは一流のバレエ学校で学び
カンパニーで毎月給料をもらいながら踊った経験があり
(つまり日本国内のバレエ団の事ではない)
培ってきた技術や経験を
次世代のダンサー達に伝えていきたいという
素晴らしい経歴と熱意の持ち主なら良いと思うのですが。

 

 

どちらでも無い人って結構多いです。

 

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プロとして本気で踊った経験は無い
海外でやっていく厳しさも知らない
親の援助を受けながら
日本のぬるい環境でバレエを続けてきた人

今さら
髪を黒くしてネイルもできなくて
スーツ着て就活なんて絶対嫌ですよね。
バレエのキラキラした所が好きな人は
プライドが許さないでしょう。

だから
親や旦那さんにスタジオを立ててもらうのが
一番手っ取り早いんです。

 

大した経歴や知識が無くても
誰でもバレエスタジオが開けてしまうんだから
本当に日本はすごいです。
 

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バレエ教室が増え生徒が分散すると
他にもこんなデメリットがあります。
 
 
1:コールド・バレエが経験できない
白鳥の湖やラ・バヤデール、ジゼル。。。なんでもいいから
しっかりコールドの踊りを極めるのも大切なことだと思います。
そもそもバレエは一人で踊るものなければ
コンクールのための踊りでもありません。
ヴァリエーションだけ踊っていては
気付かないバレエの醍醐味も

コールド・バレエから沢山学ぶ事が出来ます。
 
 
しかし最近の子供は、
こういうことを経験してきた指導者に
バレエを教えてもらえないので
人に合わせる、列や呼吸を合わせる
ということを知りません。

そもそもソロの踊りなんて
本来はカンパニーのソリスト
プリンシパルが踊る大役です。
物語の背景も教えてもらえず
とりあえずyoutubeか何かの動画を見せて
振付だけ真似ればどうにか形にはなりますが
これってバレエなのでしょうか?
 
 
各教室の生徒数が減ると
十分なコールド・バレエの練習なんて出来ませんし
コールド・バレエを踊るには
身長やレベルがある程度揃っていないといけません。
小学生、中学生、高校生を掻き集めてやっと20人になったところで
すでにバラバラなので、良い練習にはなりません。
 
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人数の問題だけではありません。
日本のバレエ教室は
子供ですら満足にヴァリエーションを踊りきれない
狭いスタジオが大半です。
これでは満足に練習が出来ません。

スタジオを立てる時点で
コールド・バレエをしようなんて考えは
さらさら無いのでしょうね。

実際はヴァリエーション一曲すら
まともに踊り切れないスタジオも多いのですが。

そんなわけで、偏ったおかしな日本のバレエ文化
の中で育つ子供が増え続けます。
 
 
 
そして留学するとこんなことに気が付きます。
日本人はやたらヴァリエーションに詳しい。
なんならかかった曲なんでも踊れる。
一方
コンテンポラリー、キャラクターダンスの
授業になると急に大人しくなる。


そう、今まで日本でずっと
ヴァリエーションばかりやらされていたから
 

これは、外国人の生徒と著しく差が出る点で
日本人留学生あるあるなんです。
 
 

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2:良き先輩やライバルがいない
 
「旦那が稼いでいるから、趣味程度に」
というバレエ教室であれば
生徒がたとえ20人でも
十分なお小遣いになるでしょうが
これでは真剣にやりたい子は大きくなると辞めてしまう為
自然と小さい生徒の割合が多くなります。
 
 
その結果
レベルや年齢、体格が離れている生徒達が
同じクラスで一緒にレッスンしないといけない
という状況が生まれます。
 
 
生徒が少な過ぎて
小学2年生~高校1年生までが一緒にレッスンしている
なんていうのも見たことがあります。
間を取って6年生のレベルのクラスをやったとして
2年生には難しすぎて何もできない
高校生には簡単すぎてやる気が出ない
という状態になってしまいます。
 

日本ではこれが普通かもしれませんが、
先生の都合でこんな事をされる生徒が可哀想です。

先生の時間・体力的には
クラスをまとめてしまった方が楽
なのでしょうが
生徒のためにはなっていないことは確かです。
 

また、そもそも人数が少ないので
同じ年のライバルはいないし
向上心・チャレンジ精神も薄れます。
下手っぴでも頑張らなくても良い役が回ってくるからです。

「あの子に負けたくないから頑張って上手になってやる!」
「悔しいから出来なかった所もっと練習しよう!」
という気持ちは
口で説明して教えられる事では無いですよね。
 
 

せっかくバレエをやっているのに
ここがしっかり経験できないまま卒業。
となると、非常~にもったいない!の一言です。
 
 
私が学生時代、周りはみんな真剣だったし上手だったので
とにかく同い年や後輩に負けたくない一心でした。
それに手本となる素晴らしい先輩たちがいました。
みんなで競い、励まし合い、お互いを高める事が出来ました。

 
こういうのが無い環境でバレエをやっても
せっかくの才能が開花するチャンスが狭まる
ということになり、
非常に残念なことだと思っています。
 
 

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もし、あなたが日本にまたひとつ
新たなバレエ教室を開きたいと考えているのならば
あなたがバレエ教室を開く理由はなんですか?

子供達の将来を預かる覚悟や
十分な経験、知識と準備はありますか?
と問いたいです。
 
 
 
 
 
それでは。