スワニルダのバレエライフ blog

日々バレエに関わる中で思う事を、綴っています。時には辛口な表現もありますが、(特にバレエ関係者の人は少々傷付く覚悟を持って)お読み頂けると嬉しいです。

バレエを習う男の子~男性プロバレエダンサーになるまで

バレエと言えば、「女の子の習い事」というイメージですよね。
実際、バレエを習っている子供の大多数は女の子で
男の子はほんの数パーセント。
更に中学生まで続ける人はもっと少ない。

ただし
それを乗り切って高校生まで真剣にバレエを続けられる人の多くは
プロを目指したいと思うでしょう。


バレエを上演するのに男性の存在は必須です。
女性だけでは、男装した女性が王子役をやらなければならなくなってしまいますよね。
(もはや宝塚)

男性はトゥシューズを履かない分
女性にはとうてい真似できない様な、高度なジャンプや技を披露します。
またパートナリングの際には、女性を美しく見せるためのサポートをしてくれます。


 

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男の子はバレエスタジオで優遇される?


足が豆だらけでトゥシューズでの練習が辛い時
女子なら誰でも一度は思うであろう事・・・それは

「男子はトゥシューズ履かなくて楽でいいよね」
もちろん筆者のスワニルダもそう思っていました。


さらに
女子はオーディションで選ばれないとメンバーには入れない作品でも
「男の子だから」というだけで入れるということも。
数が少ないから仕方が無いということは子供ながらに理解しているつもりでも
それでもやはり「不公平だ!」と思ってしまうのもの。

男の子は数が少ないので先生にも可愛がられ
特別扱いされているように見えますよね。
実際、先生だって貴重な存在である男の子に辞めてほしくはないのです。

10人の女の子の中に1人男の子がいれば、無条件に目立つのも事実。
小学校高学年以上になると体つきも変わってきますし、
女の子と全く同じようにはいかないので、個人指導になることもしばしば。

なぜ先生が男の子を欲しいかというと
1つの理由として、小さなお教室の発表会でも
作品に男の子が1人加わるだけで、振付の幅が大きく広がるからです。
男の子特有のステップやジャンプを披露することで作品にメリハリも出ます。

あとは、男の子が女の子のサポートが出来れるようになれば
男女で組んで踊ることが出来ますから
それによって女の子も成長することが出来
パ・ド・ドゥ や パ・ド・トロワ といった作品の経験を積むことが出来るのです。


このため、男の子はバレエにどうしても必要なのですね。
「優遇」という言葉が適切かは分かりませんが
女子生徒からみると、結果的にそうなっていますよね。

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仲間がいるとバレエも続けやすい

 
男の子がバレエを始めるきっかけは様々。
女の子のように「チュチュやトゥシューズに憧れて」
という感じにはいきませんが
お姉ちゃんがバレエをやっていたから自然な流れで。
お母さんが昔バレエをやっていたので入れられた。
というのも良く聞きます。

他にも男の子の習い事と言えば選択肢は色々あっただろうに
よくぞバレエを選んでくれました!
という喜ばしい気持ちはもちろんありますが、
ある程度踊れるようになるまで続けるということはもっと難しいです。

 

男の子は中学生くらいになると
才能があれば、順調に筋肉もテクニックもついてきて
更にコンクールなどで入賞し始めると
周りには真剣にバレエを続けている男の子だけが残るので
それがモチベーションにも繋がり、どんどん上手になります。

1つのスタジオあたりの男の子の数は少なくても
今はコンクールで知り合った子とSNSで繋がったり
同じ年代の気になる人や、憧れのダンサーをフォローすることで
その人が普段どんなレッスンをしているのか?
どんなことが出来るのか?を見ることが出来
「1人じゃないんだ」「負けたくないからもっと頑張ろう」と思えるわけです。


一昔前までは、なかなか他のお教室の子と知り合う手段も無いので
男の子が少ない教室だと孤独感があったり
それで辞めてしまう人も沢山いたでしょう。
その点今の子供達は
日本中、世界中のバレエボーイズと繋がれてラッキーですよね。




 

 

 

では、小学校、中学校とバレエを続け
その後留学したり、高校に入ってもバレエを優先的に続けたいと思う人は
この先どうしたら良いでしょうか?
プロを目指したいと考えている人は、是非読み進めてみてください。

 

 

男性は国内でもダンサーとして食べていけるのか?


ここからは少し現実的なお話です。
「男性はバレエダンサーとして食べていけるのか」
皆さんが気になる所かと思いますが
先に私の答えを申し上げると
「うーん、厳しい」ですね。

というのは「純粋に踊ることだけで」というのは少し難しいと思います。

国内のどこかのバレエ団に所属しても
プリンシパルレベルにならないときちんとしたギャラは出ないでしょう。

だからバレエ団も、外での仕事(ゲスト出演で出稼ぎ)をOKとしています
(ろくな給与も出さずに外での出稼ぎを禁止したらもう拷問ですものね)
もちろん所属しているバレエ団のリハーサルに穴を空けないことが条件です。



所属しているバレエ団の公演と、外部の舞台出演だけで食べていける人
またはバレエ団に所属せずフリーとして様々な舞台に立ち
これら踊ることだけで食べていける人はほんの一握り。
有名な方でも、恐らく教えをしてなんとか生計を立てているはずです。


しかも「バレエ団以外の外部の舞台出演」とは
ほとんどが「お教室の発表会」。
見に来るのは出演者の家族やお友達、というレベルの舞台ですから
ポアントもまともに履けない女子生徒のサポートをしたり
軸も引き上げも無い子供を持ち上げなればならなかったり
結構大変です。


テクニックを磨き、芸術性を追い求めたり
ストイックに自分と向き合うと言うよりは
先生や親を喜ばせることが優先になります。

無料の舞台を見に来る観客がお客様ではなく
男性ゲストダンサーにとってのお客様というのは
仕事を依頼してくれるお教室の先生だからです。




そんなに規模が大きくない舞台の場合、
ぶっちゃけ本人の踊りはそんなに上手でなくても
ある程度女子生徒のサポートが出来れば仕事はもらえます。
自分の子供や生徒が綺麗に見えさえすれば、親や先生はそれでいいのです。

今は小学生でもPDDをさせる先生もいますから
例えばその子の身長が140cmだった場合、
165cmといった背の低い男性にも需要があります。

これが海外であれば、あまり背の低い人、踊れない人に仕事はありません。
日本国内の発表会ゲストであれば、上記のような理由からまあ仕事はあるでしょう。
(ただし、これが同じ条件の女性だった場合仕事の依頼はありません)

 

 



むしろ小さな発表会にあんまりすごい人を呼んでも
見ている人にはイマイチその良さというかありがたみも伝わらないですし
出演料も高し、小さな子供の舞台にはさすがに呼びずらいと思います。(レベルが違う)

なので!
男性ゲストダンサーは、そんなに「上手!」というわけでなくても
40歳を超えて高いジャンプが披露できなくても大丈夫なのです。
日本は世界的に見ても民間のバレエ教室が多いですしね。


ゲストとして呼ばれるには
先生とのビジネスの相性(雰囲気、出演料、ロケーション等)はもちろん
生徒とのコミュニケーション能力も、仕事を頂けるかの大きな要素です。

また、必要なダンサーはもちろん作品の内容によっても違います。
-テクニック的にあまりぱっとしなくても、スタイルや顔など容姿が良い
-ガンガン踊る振付なので、背が低くてもパワフルに踊れる人が良い
-リハーサルを多くやりたいので、気軽に頼めるフットワークの軽い方が良い
-初めてのPDDに挑戦する女子生徒の相手に、サポートが上手で舞台経験豊富な人が良い
などなど・・・

 

 

プロのバレエダンサーといえば本来、
大きな舞台に立ち、一般客がチケットを購入し
その収益でダンサーに給与が与えられるというものですが
日本の男性ダンサーはいわゆる
「発表会ダンサー」(と言った方がイメージが伝わるでしょうか?)
として生計を立てている人が多いです。

発表会自体は無料の所が多いですが
生徒の親たちがお金を払うので、ゲストダンサーは出演料を頂くことが出来ます。
このように、バレエ関係者の中だけでお金が回ります。

 

 

 

な・の・で・・・
さきほども述べましたが
ストイックにテクニックを磨き、芸術性を追い求めるなど
本当の意味でダンサーとしてプロになり、その道を極めたかったら

私がいつもブログでお話ししているように
女性も男性も、やはり海外で通用するくらいの実力を身につけ
海外のバレエ団に所属することを強くお勧めします。

 

 

 

 

 

 

 

プロになったら優遇はされない

 

冒頭で、バレエを習う男の子は人数が少なく貴重な分
特別扱いされても仕方が無いと述べましたが
プロになればもちろん話しは別です。

海外のバレエ団のオーディションには
各国から優秀なダンサーたちが集まります。

もちろん国別に見ると、他の職業に比べて
男性バレエダンサーの数多いなんてことは決して無いでしょう。
しかし、世界中のダンサーがオーディションなどで
どこか一か所に集まるようなことがあれば、当然ながら数は多いわけです。

バレエ学校の毎年の卒業生の数より
プロのバレエ団で募集する枠の数の方が少ないでしょう。
バレエ団入団は狭き門です。

日本の小さなお教室でちやほやされて育っても
海外では同じようにはいきません。
あなたが今バレエを習う男の子で、将来プロを目指し海外に出たいと考えているなら
その辺をしっかり分かった上で、
今の環境に甘えずに稽古をすることが大切です。



その後はどうするのか・・・?


ずいぶん先の話になってしまいますが、
ダンサーの選手生命はそんなに長くはありませんので
ちょこっとシビアなお話しさせてください。

普通の会社員であれば、30代に入ると脂がのってきて
出世したり、どんどん給与が上がっていくのが普通です。
もちろんボーナスや様々な手当、有給もあります。
家族を養っていけるだけの安定した給与を毎月もらうことができます。

その一方で、バレエダンサーは
年を重ねるにつれ経験値は上がりますが、
年齢とともに体力もテクニックも落ちていきます。

一流のバレエ団でプリンシパルにまで上り詰め踊っていたという経歴があれば
海外のバレエ学校で、フルタイムの講師として働くことが出来るかもしれませんが
そうでない限り、日本でスタジオを開くとか
どこかに雇われて講師をする、ゲストで教える、という形になるでしょう。

もちろん、
一生自分の好きな事が出来ればお金は要らない!というのであれば良いのですが
将来は結婚して子どもも欲しい、家族を養いたい、車も必要、となると
バレエを職業とすることは、経済面で厳しい場面も出てくるかと思います。

華やかなバレエにずっと携わっていたいという気持ちもわかりますが、
あなたがまだ10代、学生なら
将来のこと、お金のことも今から真剣に考えておきましょう。
勉強もしっかりして、最低限高校は卒業しておきましょう。
20代半ばで致命的な怪我をすることだって絶対ないとは言い切れません。
その他の資格などもバレエと並行して勉強しておくと良いかもしれませんね。

「そんな保険みたいなことかけたらバレエ一本でやっていく覚悟がぶれる」
という人もいるでしょうし
「わたしは同時に2つのことが出来るほど器用じゃないし時間も無い」
という人もいるでしょう。
もちろん人それぞれですので、そこはあなたに任せます。
あくまでアドバイスとして、
そういう考え方もあるんだな、と知っておいてください。

ただ、ずっとバレエで食べていきたいのなら、
海外のバレエ団で頂点を目指すくらいの気持ちで努力し、
実際に結果を出さないとなかなか厳しいのが現実です。


 

 

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今日はバレエを習うバレエボーイズとその後、についてお話ししてみました。
何かご感想等ありましたらコメントでお知らせくださいね。

それでは。