スワニルダのバレエライフ blog

日々バレエに関わる中で思う事を、綴っています。時には辛口な表現もありますが、(特にバレエ関係者の人は少々傷付く覚悟を持って)お読み頂けると嬉しいです。

誰でもバレエ留学できる時代

日本には
きちんと職業として成り立つ
本当の意味でのバレエ団が存在しない事は
以前にお話しました。

 

にも関らず
日本のバレエ教室の数やバレエ人口は
世界的に見ても実に多いのです。


その割には
きちんとバレエが学べる国立バレエ学校や
それに匹敵する県立バレエ学校など無く
とにかく制度が整っていません。

 


つまり、簡単に言うと日本では


芸術としてのバレエ文化と言うより
趣味や習い事としてのなんちゃってバレエ文化
が大きく発達したというわけです。

 

 

それでもある程度バレエを続けると
「海外のバレエスクールに留学したい!」
となるわけですね。

 

今の時代
世界の誰とでもSNSを通して繋がることが出来
現地の情報もリアルタイムで
簡単に手に入れる事が出来ます。

 

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日本人は海外のバレエスクールでも重宝されます。
それは何故か・・

 

日本人はある程度のお金も有りますし
支払い期限も支払い額もきちんと守ります。
+@でバレエの先生は
プレゼントやお土産までもらえるかも。


校内では大人しく問題を起こすようなこともしないし
真面目で誰よりも沢山練習をします。
何か文句があっても
よっぽどの事が無い限り「NO」とは言わないし
白人も大好き。

 

ビジネスでスクールを運営している
欧米のバレエスクール側にとって
日本人は最高の顧客なのです。

 

それで海外のバレエスクールは
こぞって日本人生徒を欲しがるわけです。

 

今ではプライベート(私立)の学校も増えてきています。
割と新しい学校だと、とにかく生徒が集めたいので
わざわざ日本でオーディションをしたり
ウェブサイトに日本語の説明があったりします。
または日本人留学エージェント/コーディネーターを通して
ツアーを企画し、何校か現地オーディションをして周る
というものも有ります。

 

他には、日本のコンクールと手を組んで
入学許可を「賞」または「商品」として
参加者に与えるタイプも増えてきましたね。

でも入学許可なんて、まあまあ踊れれば誰でももらえます。
「あの子そんなに上手かった・・?」
という子でももらえるんだ~という経験
みなさんもコンクールに参加した事があるなら
身に覚えがあるではないでしょうか。

 


つまりお金を払って来る気がある子は
誰でもウェルカムです。ということ。

 


「とりあえずコンクールに出て
留学権利をもらった所に行こう~」
という考えになるのも当然。


自分の意思で、自分の行きたいところへ
自力でオーディションしよう!
という気持ちはどこへやら・・・
留学に対し完全に受け身になります。

 

 

「とりあえずコンクールに出て
何か賞もらえたらラッキー」
という軽率な考え・姿勢で
舞台に立つ機会も増え続け

舞台慣れを通り越して
バレエをなめ始めます。

 


大した練習もしないでコンクールに申込み
きちんとバーレッスンもしないで
衣裳を着たままお菓子を食べたり
先生にタメ愚痴をきいたり
楽屋でおしゃべりしたりと
修学旅行気分の子供たちの事です。

 

こんな指導で本当に良いダンサーが育つでしょうか?

 

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もちろん
国立のバレエ団付属スクールへの入学は
そう簡単にはいきませんし
私立のスクールでも、フルスカラシップ(学費全額免除)
という条件で行くというのなら
恐らく実力も申し分ないのですが


比較的新しい学校、プライベート(個人)の学校、
バレエ団付属で無い学校に
何十万、百何万払って招待されたのであれば
自分の才能の素晴らしさに喜ぶのは
少し早いかもしれません。


だって今の時代
お金さえ払えれば誰でも留学できる
のです。

 

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一昔前までは
本気でプロになりたい人。
バレエ以外興味の無い人。
バレエが上手になれればなんでもいい人。
ローザンヌ、ヴァルナ、ジャクソンなどの
老舗・難関国際コンクールで
入賞するほどの実力がある人。
人に頼らず自力で調べて現地に行き
オーディションをする人。
など

本気でバレエをやりたいという気持ちのある
限られた人たちだけが留学する時代でした。

 

しかし今は
時代も違うので仕方のないことかもしれませんが
特別上手でなくても
特別スタイルが良くなくても
「この人本当にバレエしに来たの?」という人でも
お金さえ払えれば
普通に留学しているんですね。


もちろん一言で「留学」とひとくくりにしても
学校のレベルの差はそれぞれですから
一口に「留学している」と言っても
もう、すごくもなんともない時代ですね。

 

 

ヨーロッパだ、アメリカだ、ロシアだ、と
横文字がずらずらと並んでいると一見
「かっこいい!」と思いますよね。

例え実際には
誰でも入れるようなレベルの低い学校だったとしても
どうせ親戚や学校の友達にはバレないですしね。


日本人相手の履歴書作りには
良いのではないでしょうか。

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先ほどのように、
履歴書作りがメインで
外側を気にしての留学を希望する方は置いていて

 

 


バレエが本気で上手になりたい人へ


このような簡単に入れてしまう
名前を聞いた事も無いバレエ学校に
合格したくらいで勘違いしていると
逆にバレエが下手になるので
忠告しておきます。

 

それから
国立のバレエ学校なら歴史もあり
留学生受け入れ態勢や素晴らしい設備が
整っていますから安心ですが

 

小さな私立や新しい学校はそうは行きません。


生徒の人種に偏りがあったり
扱いや接し方に不平等なところもあるでしょう。
書類事のやり取りに問題があったり遅かったり
アカデミックや英語の授業が無かったり
寮やアパートの設備が不十分だったり
肝心のクラスの内容やスケジュールがしょぼかったり
舞台が無かったり、周りの生徒のレベルが低かったり・・

こんなことは実際に良く聞く話しです。


それに加えて今までのように
自分の事を分かってくれる日本の先生も
食事管理をしてくれたり
甘えられる親もいません。
おまけに周りには言葉の通じない人たちばかり。

だから一緒にいるのはいつも日本人。
おかげでますます現地の言葉は習得できず
ストレス、慣れない食事や生活で太ったり
鬱(うつ)になる人もいます。

 

そんなわけで
なまぬるい気持ちでの留学はお勧めできません。
日本出発前から相当の覚悟を持って行かないと
あっという間に太り
肝心のバレエは上達どころか
日本にいた方が上手になってたんじゃない?
という残念な結果で
1年はあっという間に終わります。

  

「合格したから私はすごい」と勘違いし
「留学とか自慢出来るよね」
「親から離れて自由になりたい」
「入れればどの学校でもいいや」
などという理由ですると、留学は大失敗します。

 

 

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バレエ留学のあるある失敗談の原因は
周りの環境のせいだけではありません。
どんな国に行っても起こりうる事は

 

-ホームシック
-怪我
-体調管理不足
-太るまたは拒食症
-海外の生活に馴染めない
-コミュニケーションが取れない孤独感
-体型コンプレックスの悪化
-生活習慣の変化によるストレス

 

などがあるでしょう。

これらは実際に
行ってみたいと分からない所もあるのは事実です。
どんなに今まで真剣にバレエをやってきて
強い意志を持ってやっとの思いで海外に出ても
上記のどれか一つにやられるだけで
留学を諦めなければならないほど
立ち直れなくなる可能性も大いにあります。

 

留学は決して
楽しい、かっこいい、すごい
だけでこなせるものではありません。
16歳前後で留学する人が多いでしょうが
精神的にも肉体的にも
まだまだ子供なのです。

 

 

ですから 
これから留学を考えている人は
その先に何がしたいのか
将来のビジョンと目標を持って
留学先を選びましょう。

そして強い決意と
バレエのためならなんでも頑張れる!
という心を持って臨んでください。


それが無いのなら
たとえ入学は出来ても
実りのある充実した1年にすることは難しいでしょう。

 

 

 

海外での素晴らしい経験を積み
また一人素晴らしいダンサーが誕生する事を
願っています。

 

 

それでは