スワニルダのバレエライフ blog

日々バレエに関わる中で思う事を、綴っています。時には辛口な表現もありますが、(特にバレエ関係者の人は少々傷付く覚悟を持って)お読み頂けると嬉しいです。

舞台用語を勉強しよう その①

舞台上では様々な専門用語・業界用語が飛び交います。
今回は初心者の方でも分かりやすいように
バレエや舞台に関する用語説明に
+αを加えたダンサー目線での解説をしたいと思います。
今回はその第一弾です。


まだ舞台に慣れていない人は
予習しておくといづれ役に立つと思います。
 

 

舞台さん

 

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舞台の床にリノリウムを敷いたり、
照明や大道具などをセッティングしてくれます。
踊り手のみなさんと直接お話しすることは少ないと思いますが
みんなが安全に楽しく踊れるようお仕事をしてくれていますので
しっかりと挨拶をしましょう。

また、舞台を作るために沢山の機械や道具を使用します。
舞台が使えない時間(舞台さんの作業中)は
決して舞台・舞台袖へ行ってはいけません。
床には穴が開いていたり、電気のコードが走っていたり
上から物が落ちてくる危険もあります。

 

 

 

 

場あたり

音楽はかけずに、舞台上の立ち位置や列の確認、
どの幕から出てどこへはける(退場する)かなどのポジション、
全体の人や道具の動きの流れを確認するリハーサルです。

 

リハーサルを指揮する先生は客席からマイクで指示をします。
客席から見て、右半分が上手、左半分を下手と呼びますが
ダンサーからすると反対になるので、
踊っている時(客席に正面を向けている時)は
自分の右が下手(しもて)、左が上手(かみて)」と覚えましょう。

 

また、客席に近い方がダウンステージ、
客席から離れて奥にいくとアップステージとなります。
日本のお教室であれば、「もう一歩手前に出て~」などの指示があると思いますから
覚えなくても大丈夫だと思いますが、これは海外の古い、床が斜めの舞台から来ている呼び方のようです。奥で踊っていても、足元までお客様に良く見えるように設計されたのだそう。しかし日本ではほとんどの舞台が平らですから安心してくださいね。

 

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実際にスイス・ローザンヌのボーリュ劇場の床は
当時十代の私が想像していたよりも角度が急でかなり苦労しました。
文字通り、舞台の奥がアップ、つまり高くなっているので、
身体が客席の方に前のめりになってしまい、回転なんか結構怖いんですよ。
日本でも毎年テレビ放送されますが、映像だと床が傾斜しているだなんて
全く分からないですよね。


ついでにもっとややこしい話しをすると、海外では上・下が逆(?)になります。
踊り手目線で名前がつけられているからなんです。
ダンサーから見て(正面を向いている場合)右手がStage Right(ステージライト・右)
左がStage Left(ステージレフト・左)なのです。
留学する事があれば役に立つので覚えておいてくださいね。

 

 

さて、話しを場当たりに戻しましょう・・・

 

センターの他、前方には赤、緑、黄色など
色のついたテープ(ライト)が貼ってあると思います。
これは左右対称になっていて、反対側にも同じ色が付いています。


リノリウムは横敷きの場合と縦敷きの場合がありますが、
この線は常にまっすぐなので、場所を覚えるのに利用しましょう。


また、横の位置を覚えるのに袖幕も利用できます。
幕が4つあるとして、縦の列は「黄色の1歩外、横は3つ目の幕のラインに立つ」
というように、横の列と縦の列の両方をしっかり確認しましょう。


同時に自分と対象の位置にいるべき対(つい)の人が同じ場所にいるかも
常に気にしておかなければいけません。
それぞれが自分の事ばかり考えていては、列を揃えることは不可能です。
舞台の上では、コールドの列を揃えるのも一苦労。
人と人との距離が広くなり踊りやすいという点もありますが
例えば12人で大きな斜めの直線を作る場面では
これまでに練習してきた間隔、角度とは大きく異なります。
スタジオでの感覚を一度忘れ、会館ごと、作品ごとに
場当たりをしながら新しい感覚を身につけなければいけません。

 

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また舞台は、普段練習しているスタジオの何倍もの広さがありますから
いつもどおりに踊っていると、踊りが小さく見えたり
音に間に合わなかったりしてしまいます。


例えば、袖からセンターまで、いつもは10歩で着いていたとします。
でも広い舞台の上では倍かかるかもしれません。
そのぶん時間も倍かかるということです。


いつものレッスン場で踊るよりだいぶ疲れると思いますので
ヴァリエーションであれば、普段から
全力で2回連続で通す
ことに慣れておくと
体力がつき、舞台で苦しまずに済むでしょう。
また、本番が近づいてきたら、練習用チュチュや本番用衣装を着て
衣裳を着た感覚に慣れておく事も大切です。

 

本番当日はただでさえ緊張したり興奮したり
一方で慣れない環境で戸惑うこともありますので
このように事前に準備できる事はやっておくのがおススメです。


会館によって大きさや作りは全て違いますので
場当たりは、通し稽古の前にプロでも必ず行います。
袖からセンターまでの位置、マネージの大きさ、舞台の奥行き、
列の感覚や人と人との距離、どこから入ってどこへはけるか、など
しっかりこの限られた時間内で感覚を覚えましょう。

 

 

 

 

通し稽古

場当たりで場所の確認をしたあとは
いよいよ衣裳を着てメイクをして、音楽を流し、つまり
本番同様に頭から終わりまで通してリハーサルを行う。これが通し稽古。
ダメ出しもせず、一切止めずに本番と同じ条件で行う直前のリハーサルは
ゲネプロとも呼ばれます。

 

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場当たりでは大丈夫だったのに、
通してやってみたら思わぬ問題が発生することも。
そのためせっかく場当たりで決めたこと・覚えた事にも
変更が出るかもしれません。
そのときは頭を切り替えて、全て覚え直します。
パニックにならないよう、落ち着いて冷静に対応しましょう。

 

衣装や小物などは、お姉さんや先生、スタッフの方が
管理してくださることと思いますが
自分でも「無くさない、汚さない」ように気を付けることが
舞台に立つ踊り手としてのマナーです。

 



これから説明することもほとんどの場合
先生やスタッフが管理してくれる事と思いますが
知っておくと役に立つかもしれないので説明しておきます。

 

発表会の中で、あなたの出番が何度かあるとします。
曲と曲の間にどれくらい時間があるか計算して準備をしておきましょう。
ただしあまり早く準備をして長時間舞台袖で待つと邪魔になりますし
身体も冷えてしまいますので、目安をお伝えします。


自分の出番の前の作品は
「この曲は2分、次の曲は7分くらい・・・」
と把握しておく事が大切です。
思ったより時間が無くて、心と身体の準備が出来てないまま本番・・・
なんて事にならないようにしましょう。

自分の出番前にどれくらい余裕があるか逆算する癖を付けます。
例えば以下のようなプログラムの場合

  1. スワニルダのバリエーション
  2. 妖精の踊り
  3. 海賊のグラン・パ・ド・ドウ
  4. 子猫のワルツ
  5. 自分の出番

 

子猫のワルツが3分、海賊のGPDDが9分、妖精の踊りが4分とすると
スワニルダのバリエーションが終わる頃、妖精の踊りが始まった頃を目安に
衣裳を着て、自分が出る舞台袖(上手か下手)で待機していると
ちょうど良いのではないかと思います。
ただし、指示をしてくれる人や先生がいる場合は
一人で行動せずにしっかりお話しを聞き従いましょう。


もう先生に自分でやるように任されていたり
バリエーションを踊る人は、知っておきましょう。

 

 

 

いかがだったでしょうか?
バレエ舞台用語の解説と言っても
辞書のように説明するのもつまらないので
ダンサー目線で具体的にお話ししてみました。

 

それではここで第二弾に続きます。

お楽しみに。